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哭声／コクソン（THE
WAILING）
（2016年 韓国）（上映時間2時間36分）
監督・脚本：ナ・ホンジン
出演：クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ、キ
ム・ファニ、チャン・ソヨン
＊シネマート新宿ほかにて公開
ホームページ http://kokuson.com/
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＜ストーリー＞
平和な田舎の村に得体の知れない日本人の男（國村隼）がやってきて、山の中
の一軒家に住み着く。そんな中、村人が自分の家族を惨殺する事件が連続して
発生する。犯人はいずれも体中を湿疹に覆われ、濁った眼をして、言葉を発す
ることもできない状態で現場にいた。村人たちは日本人の男が関係していると
噂する。事件を担当する村の警察官ジョング（クァク・ドウォン）は、自分の
娘ヒョジンにも犯人と同じ湿疹があるのを発見する。娘を守ろうとしたジョン
グは、祈祷師のイルグァン（ファン・ジョンミン）を村に呼び寄せるのだが…
…。
＜レビュー＞
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猟奇殺人は悪霊の仕業か？世にも恐ろしくスリリングな恐怖映画
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『チェイサー』（2006）、『哀しき獣』（2010）と、密度の濃いクライム・サ
スペンスを送り出してきたナ・ホンジン監督による映画。サスペンス、スリ
ラー、オカルト、ゾンビなど様々な要素が盛り込まれています。
冒頭に登場するのは新約聖書の福音書の一節。これがラストにも登場する重要
なテーマになります。
舞台は山奥の静かな村。そこで猟奇殺人が起きます。村人が自分の家族を惨殺
したのです。しかも、同種の事件が連続します。犯人はいずれも全身に湿疹が
あり、濁った眼をして、何かにとりつかれたような状態でいます。原因は毒キ
ノコではないかという話も出ますが、村人たちは山の中の一軒家に住み着いた
日本人の男が怪しいと疑うようになります。地元の警察官ジョングは、その男
を追及します。
山奥の美しい風景の中、それとは対極のおどろおどろしい事件の犯人捜しのサ
スペンスに、謎の男の存在が絡む前半。ナ・ホンジン監督の映画は相変わらず
映像が凄い。緊迫感にあふれ、おぞましく、迫力満点の映像が続きます。
そして、國村隼演じる謎の日本人の怪しさ。裸で四つん這いになってシカの肉
を食らうなど、まさに悪魔的な存在です。実は、それは警察官ジョングの悪夢
だったり、村人の噂を映像化したものなのですが、巧みな描き方で謎と恐怖を
増幅していきます。男が住む家の中の怪しすぎる様子や、凶暴な飼い犬なども
効果的に使われます。
終盤で重要な役割を担う女を、笑いとともにさりげなく登場させる仕掛けも面
白いところ。それ以外にも、こんなに恐ろしいドラマなのに、あちこちに笑い
が散りばめられているのがユニークです。
前半から後半にかけて、謎と恐怖がじわじわと積み上がっていきます。そして、
それが爆発する後半。幼い娘にも湿疹が現れ、奇怪な行動をとるようになった
ことから、ジョングは娘を救うために暴走していきます。
そこでジョングが頼ったのは祈祷師です。祈祷師は娘には悪霊がとりついてい
るといい、それを追い払う儀式をします。おお、これはオカルト映画の名作
『エクソシスト』と同じ展開ではないですか！
しかし、シンプルに善と悪の対決に落とし込んだ『エクソシスト』とは違い、
この映画は複雑な展開を見せていきます。祈祷師は悪霊の正体は例の日本人の
男だとして、彼を呪い殺そうとします。後半のヤマ場はその祈祷の儀式の場面。
太鼓の響き（これ以外にも全編で効果的に使われる）がとどろく中で、高揚感
に満ちた儀式が行われます。
それに対して、謎の日本人もまた呪術的な行為に出ます。うーむ、これは何が
どうなっているのやら。わからないことだらけではあるものの、有無を言わさ
ぬ迫力に目が離せません。
だが、それでも話は終わりません。詳しくは伏せますが、ジョング、謎の日本
人、祈祷師、謎の女が入り乱れて、二転三転する展開。ギリギリの場面が続き
ます。その過程ではゾンビ映画のようなシーンも登場します。
かなりエグいところが多いし、オカルト的な要素もあるし、話自体はかなり無
茶なのですが、力技で観客をスクリーンに引きずり込みます。おかげで、2時間
36分という長尺があっという間でした。
ちなみに、カタルシスを求める人には、この映画はお勧めしません。事件の真
相や謎の日本人の正体は、最後まで明らかになりません。しかし、それもまた
この映画にふさわしい構成に思えました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年3月11日（土）シネマート新宿にて。午前9時30分の回
[「こ」のページ]
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