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ラビング 愛という名前のふたり（LOVING）
（2016年 アメリカ）（上映時間2時間3分）
監督・脚本：ジェフ・ニコルズ
出演：ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニッ
ク・クロール、テリー・アブニー、アラーノ・ミラー、ジョン・ベース、マイ
ケル・シャノン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/loving/
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＜ストーリー＞
1958年、バージニア州。白人男性のリチャード・ラビング（ジョエル・エド
ガートン）は、幼なじみで恋人の黒人女性ミルドレッド（ルース・ネッガ）か
ら妊娠を告げられ、結婚を決意する。バージニア州では異人種間の結婚は法律
で禁止されていたため、2人は法律で認められているワシントンD.C.で結婚の手
続きをする。その後、地元で暮らし始めた2人だが、ある日、自宅に押しかけて
きた保安官に逮捕されてしまう。法廷で離婚するか、25年間州外に退去するか
選択を迫られるラビング夫妻だったが……。
＜レビュー＞
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歴史を変えた異人種間の愛の物語
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異人種間の結婚が違法とされていた1950年代のバージニア州を舞台にした実話
をもとにした映画です。ジェフ・ニコルズ監督は、これまでに『MUD マッド』
『テイク・シェルター』というなかなか面白い映画を撮ってきました。
1958年、バージニア州。白人男性のリチャード・ラビングは、幼なじみの黒人
女性ミルドレッドから妊娠を告げられます。結婚を決意したリチャードは、ミ
ルドレッドと一緒にワシントンD.C.に行って結婚の手続きをします。なぜかと
いうと、地元のバージニア州では異人種間の結婚が法律で禁止されていたから
です。2人は地元で暮らし始めますが、保安官に逮捕されてしまいます。そして、
裁判で離婚するか、あるいは25年間州外に退去するか選択を迫られます。
タイトルの「ラビング」とは主人公夫婦の名前。同時に「愛」ともかかってい
ます。つまり、これは一組の夫婦の愛のドラマなのです。2人は人種差別と闘う
ことになりますが、それはただ愛を守りたいから。そんな視点が貫かれた映画
です。
前半で印象的なのはバージニア州ののどかな田園風景。そこでは黒人と白人が
一緒になって働いています。一見、差別など感じさせない光景です。しかも、
リチャードは子供の頃から黒人と過ごしており、ミルドレッドを好きになった
のはごく自然なことでした。そうした描写があるからこそ、逮捕されるという
事実がなおさら理不尽で、ショッキングなものに感じられるわけです。
2人の愛は真実の愛です。離婚など考えられません。そこで2人は故郷を離れて
暮らします。しかし、いざミルドレッドの出産が近づくと、どうしても故郷で
出産したくなり（リチャードの母親は助産師）、故郷に戻ります。しかし、そ
こで彼らはまたしても逮捕され、再び故郷を離れることになります。
その後、3人の子供に恵まれた夫妻ですが、やはり故郷への思いは断ちがたく、
ミルドレッドはケネディ司法長官に手紙を書きます。ちょうど当時は公民権運
動が盛んな時でした。その手紙がきっかけで、人権派弁護士と知り合った2人は、
裁判によって理不尽な処置を覆そうとします。
というわけで、後半ではラビング夫妻は人権派弁護ととともに立ち上がるので
すが、そこでも声高に何かを叫んだりはしません。それもまた愛を貫くための
行動にしかすぎません。
社会派映画にありがちなお説教臭さは皆無です。むしろ新米の人権派弁護士の
頼りなさを前面に出したり、裁判に積極的なミルドレッドと消極的なリチャー
ドのすれ違いを描くなど、ドラマ的な妙味にあふれています。
終盤は裁判闘争がドラマの大きな核になりますが、法廷自体は必要最低限にし
か描きません。あくまでも夫婦の姿を中心に描きます。
そしていよいよ判決。ラストは文句なしに感動できます。夫婦の愛の強さと、
それが世の中を動かしたという事実が、心を揺り動かします。
寡黙ながら芯の強さと優しさを表現したジョエル・エドガートン、健気さの中
にたくましさを見せたルース・ネッガの演技が見事です。セリフなしでも、そ
れぞれの心の内が伝わってくる演技でした。
民族差別など何やら雲行きが怪しい今だけに、なおさら観る価値のある映画だ
と思いました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年3月17日（金）TOHOシネマズシャンテにて。午前10時45分の回
[「ら」のページ]
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