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密偵（THE AGE OF SHADOWS）
（2016年 韓国）（上映時間2時間20分）
監督：キム・ジウン
出演：ソン・ガンホ、コン・ユ、ハン・ジミン、鶴見辰吾、オム・テグ、シ
ン・ソンロク、ソ・ヨンジュ、チェ・ユファ、フォスター・バーデン、パク・
ヒスン、イ・ビョンホン
＊シネマート新宿ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://mittei.ayapro.ne.jp/
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＜ストーリー＞
1920年代、日本統治下の朝鮮。朝鮮人でありながら日本の警察に所属するイ・
ジョンチュル（ソン・ガンホ）は、独立を目指す武装組織「義烈団」の監視を
命じられる。ジュンチュルは義烈団のリーダー格のキム・ウジン（コン・ユ）
に接近するが、それは義烈団の団長チョン・チェサン（イ・ビョンホン）がジ
ョンチュルを味方に引き入れるための餌だった。そんな中、義烈団は京城で日
本の主要施設を標的にした大規模な破壊工作を計画する。その準備のため上海
に飛んだメンバーを追う日本警察。やがて爆弾を積んだ列車が京城を目指して
走り出す……。
＜レビュー＞
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日本統治下の朝鮮を舞台にしたスリリングなスパイ・アクション
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1910年に大韓帝国が日本に併合されてから、日本が第二次世界大戦に敗北して
朝鮮総督府が降伏する1945年まで、朝鮮は日本の統治下にありました。そんな
歴史を背景にした映画。ただし、小難しい歴史ドラマでも、反日機運を煽るド
ラマでもなく、エンタメ性タップリのスパイ・アクション映画です。
舞台となるのは1920年代、日本統治下の朝鮮。そこでは日本からの独立を目指
す武装組織織「義烈団」が過激な活動を展開しています。映画の冒頭は、その
義烈団のメンバーが日本警察に包囲されて逃げ出すシーン。それを追うのは朝
鮮人でありながら、日本警察に所属して義烈団の摘発を進めるイ・ジョンチュ
ル。
冒頭から激しいアクションが炸裂します。それはある種の様式美にも近いケレ
ン味のあるアクションです。しかし、この映画、全編にアクションが散りばめ
られているわけではありません。むしろ大半は静かなシーン。その代わり手に
汗握るようなスリルにあふれています。こうした「静」と「動」が絶妙のバラ
ンスで配された映画です。
ジョンチュルは、上司の日本人ヒガシから義烈団の監視を命じられています。
そこで彼は、義烈団のリーダー格のキム・ウジンに接近を図ります。その目論
見は思いのほかうまくいきます。しかし、それは義烈団の団長チョン・チェサ
ンがジョンチュルを味方に引き入れるための餌だったのです。
こうしてジョンチュルは義烈団に情報を流す羽目になります。そもそも警察と
義烈団の周囲ではたくさんの密偵がうごめいて不穏な動きをしていました。誰
が敵で誰が味方か皆目見当がつかない疑心暗鬼の状態で、ピリピリした緊張感
がスクリーンを包みます。
ジョンチュルにはもう一つの懸念事項があります。ヒガシに命じられてコンビ
を組むことになったハシモトという日本人の存在です。ハシモトは最初からジ
ョンチュルに不信の目を向け、隙あらば陥れかねない態度。ジョンチュルと彼
との騙し合いも、この映画の大きなポイントです。
まもなく、義烈団は京城で日本の主要施設を標的にした大規模な破壊工作を計
画します。その準備のためにメンバーは上海に飛び、それを追ってジョンチュ
ルやハシモトたち日本警察も上海に飛びます。上海で展開する両者のせめぎ合
い。そこでも何度もあわやの場合が出現します。
やがて、義烈団メンバーは、爆弾とともに列車に乗り込み京城を目指します。
そこからは列車の中でのスリリングなヤマ場が続きます。義烈団メンバーを発
見しようとするハシモト。それを阻止しようとするジョンチュル……。
その先は波乱の展開が続きます。その中で、ジョンチュルを演じる実力派俳優
ソン・ガンホの演技力が一段と輝きます。朝鮮人でありながら、日本警察の一
員である彼は、義烈団に対する過酷で非人道的な追及の先頭に立たされます。
その苦悩がひしひしと伝わってきます。
最後の最後でジョンチュルは決然と行動します。それは彼の様々な思いが交錯
した末の行動です。ラベルの「ボレロ」が流れる中、盛り上がりは最高潮に達
します。
『グッド・バッド・ウィアード』『悪魔を見た』のキム・ジウン監督による演
出。ソン・ガンホをはじめとする役者たちの演技。いずれをとっても一級品の
スパイ・アクション映画だと思います。
そしてエンタメ性を前面に押し出しつつも、日本統治下の朝鮮の人々の悲しみ、
怒りも、スクリーンに無理なく刻み込んでいます。それがこの映画の最大の特
徴でしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年11月14日（火）シネマート新宿にて。午後12時55分の回
[「み」のページ]
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