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ムーンライト（MOONLIGHT）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間51分）
監督・脚本：バリー・ジェンキンズ
出演：トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、ア
シュトン・サンダーズ、ジャハール・ジェローム、アレックス・ヒバート、ナ
オミ・ハリス、マハーシャラ・アリ
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://moonlight-movie.jp/
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＜ストーリー＞
黒人少年シャロンは、マイアミの貧困地域で母ポーラ（ナオミ・ハリス）と暮
らしていた。ポーラは麻薬中毒で育児放棄状態。学校でシャロンはリトルとあ
だ名されて、いじめられていた。そんなある日、シャロンはいじめっ子に追わ
れているところを、近所に住む麻薬の売人フアン（マハーシャラ・アリ）に助
けられ、親しく交流するようになる。一方、シャロンは幼い頃からの友達ケヴ
ィンに対して、友情以上の思いを抱くようになるのだが……。
＜レビュー＞
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圧倒的な映像の力で描く少年の成長物語
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第89回アカデミー作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞した映画です。
シャロンという黒人少年の成長を3部構成で描いています。1部は少年時代。シ
ャロンはマイアミの貧困地域で母ポーラと暮らしています。しかし、母は麻薬
に溺れ、男出入りが激しく、シャロンには居場所がありません。しかも、彼は
体が小さいため、学校でリトルとあだ名されて、いじめられています。そんな
中、シャロンを救ったのは近所の麻薬の売人フアン。彼とその恋人は、シャロ
ンと親しく交流します。
シャロンにとって2人は父親と母親のよう。特にフアンは「自分の道は自分で
決めろ」と諭し、シャロンに大きな影響を与えます。
一方、シャロンには唯一心を許せるケヴィンという幼なじみがいます。彼との
関係が、その後のシャロンの人生に大きな影を落とします。
そして2部。シャロンは高校生になっています。母親の麻薬中毒はますますひど
くなり、売春までしています。そんな中、フアンはすでに亡くなったものの、
彼の恋人だった女性がシャロンをサポートします。その一方で、シャロンは学
校で以前よりも手ひどいいじめを受けています。同時にケヴィンとの友情は、
それ以上の思いへと変わりつつあります。しかし、その信頼していたケヴィン
もイジメに巻き込まれ、最後は大きな出来事に発展します。
最後の3部は成人したシャロン。施設に入った母親のために転居した彼は、そこ
で麻薬の売人となって羽振りをきかせています。そんな中、思わぬ電話がかか
ってきます。
というわけで、3部構成ながらまったく違和感のない映画。それぞれのセリフや
行動がうまくつながり、1本のドラマとしてきちんと成立しています。シャロン
を演じる役者もパートごとに違うのですが、不自然さは感じられません。
そして、この映画の最大の特徴は映像です。カメラをぶんぶん回したり、極端
なアップにしたり、わざとピントをぼかすなどの大胆な手法を使いつつ、登場
人物の心理を繊細に切り取ります。セリフは必要最低限。それでも多くのこと
が映像から伝わってきます。
タイトルにある「月の光」を効果的に使うなどした、美しい映像も印象的。特
に海や浜辺でのシーンは、幻想的なほどの美しさです。音楽の使い方も素晴ら
しい。クラシック風な音楽から、ヒップホップ、ソウル、ジャズ、はてはカエ
ターノ・ヴェローゾの名曲「ククルクク・パロマ」まで、多彩な音楽を映像に
うまく乗せて、場面ごとにふさわしい世界を構築しています。
この映画には、ほぼ黒人しか登場しません。また、同性愛という要素もありま
す。しかし、それらは要素の一つにしか過ぎません。あくまでも、困難を背負
いつつ、自立し、傷つきながらも前に進む少年の、普遍的な成長物語になって
います。
3部の最後、つまりオーラスのシーンも印象的。あっけないぐらいに短いものの、
余韻の残る美しいシーンです。それは、逆境をはねのけるため、精いっぱい見
栄を張り、肩ひじを張って成り上がったシャロンが、ようやく自分に素直にな
れた瞬間ではないでしょうか。
『ラ・ラ・ランド』のような派手さも楽しさもここにはありません。しかし、
人間を描き切ったという意味では、見事としか言いようのない作品です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年4月4日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時50分の回
[「む」のページ]
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