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武曲 ＭＵＫＯＫＵ
（2017年 日本）（上映時間2時間5分）
監督：熊切和嘉
出演：綾野剛、村上虹郎、前田敦子、片岡礼子、神野三鈴、康すおん、風吹ジ
ュン、小林薫、柄本明
＊新宿武蔵野館ほかにて全国公開
ホームページ http://mukoku.com/
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＜ストーリー＞
父（小林薫）に幼少時から厳しく鍛えられ、剣道で一目置かれる存在となった
矢田部研吾（綾野剛）だが、父をめぐるある事件をきっかけに剣を捨て、自堕
落な日々を送っていた。そんな研吾を立ち直らせようと、師匠である僧侶・光
邑（柄本明）は、ラップに夢中の高校生・羽田融（村上虹郎）を送り込む。融
は剣道初心者だったが、本人も気づかない恐るべき剣の才能を秘めていた……。
＜レビュー＞
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迫真の決闘シーンが見ものの現代版剣術映画
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芥川賞作家・藤沢周の小説「武曲」を『海炭市叙景』『私の男』の熊切和嘉監
督が映画化しました。現代の鎌倉を舞台に、生きる気力を失った凄腕剣士と、
天性の剣の才能を持つ少年との対決がメインの映画です。
主人公は矢田部研吾という青年。彼は子供の頃から、剣道の達人の父によるス
パルタ教育を受けてきました。しかし、成長した今は、父をめぐるある事件が
きっかけで剣を捨て、酒に溺れ、自堕落な生活を送っているのでした。いった
い何が起きたのでしょうか？
て、最初のシーンでミエミエじゃないかぁ〜。というわけで、簡単にいえば、
木刀で父と渡り合い、父を傷つけてしまったのです。そこにはお互いにいろい
ろな背景があるようなのですが、とにかくそれがトラウマとなって、研吾は自
堕落な生活に転落しているのです。
そんな研吾を心配しているのは師匠で禅僧の光邑。指導する高校の剣道部でた
またま見かけた羽田融という少年に、ものすごい剣の才能があると見抜いた光
邑は、研吾を立ち直らせるきっかけになるかもしれないと思い、彼のもとに融
を送り込むのでした。
メインになるのは2人の決闘シーン。しかし、私はその前に引いてしまいました。
だって、研吾の自堕落ぶりがいかにもステレオタイプでつまらないんです。髪
ボサボサ、ひげ面というスタイルはともかく、酒浸りで暴れるシーンなど乱行
ぶりが陳腐すぎます。
父に対する複雑な思いを抱え、様々な感情が行きつ戻りつしながら、ダメな生
活から抜け出せないというのはよくわかるのですが、もう少し工夫があっても
良かったのではないでしょうか。
それでも熊切監督らしさは発揮されています。過去の作品でも見られたように、
現実ではない出来事を描いたり、ファンタジックなシーンやイメージショット
を繰り出すなど、映像の力で研吾の心の内を描き出していきます。
同時に、彼と対決する融の屈折した心理も描かれます。彼はラップ好きの現代
風の高校生でありながら、かつて台風の洪水で死にかけたことがあり、その時
に味わった感覚が忘れられずにいます。
そして、いよいよ2人の対決。それは嵐の中で行われる壮絶な果し合い。映像の
迫力がハンパではありません。独特の音の使い方も緊張感を高めます。相当に
訓練したであろう綾野剛、村上虹郎の殺陣も見事なもの。彼らが全身から醸し
出す不気味な殺気は、まさに魂のぶつかり合いという感じです。
ラストでは、それとは対照的に静かな剣道での対決があります。2人の心の変化
を体現したような闘いです。
研吾のトラウマ克服はやや都合よすぎだし、融の母親の立ち位置も曖昧。前田
敦子演じる研吾の恋人の存在が意味不明など、いろいろと気になるところはあ
りますが、リアルな人間ドラマというよりも、現代版剣術ドラマとして観れば
それなりに楽しめそうです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（76点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年5月22日（月）TOHOシネマズ日本橋にて。午後7時の回
[「む」のページ]
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