ナミヤ雑貨店の奇蹟


(2017年 日本)(上映時間2時間9分)
監督:廣木隆一
出演:山田涼介、村上虹郎、寛一郎、成海璃子、門脇麦、林遣都、鈴木梨央、
山下リオ、川辺映子、手塚とおる、PANTA、萩原聖人、小林薫、吉行和子、尾野
真千子、西田敏行
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://namiya-movie.jp/
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<ストーリー>
2012年。悪事を働いて一軒の廃屋に逃げ込んだ幼なじみ3人組の敦也(山田涼
介)、翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)。すると突然、シャッターの郵便受
けに一通の手紙が落ちてくる。それは1980年に書かれた悩み相談の手紙だった。
そこはかつて店主の浪矢雄治(西田敏行)が客の悩み相談に応じていた「ナミ
ヤ雑貨店」だったのだ。店内に落ちていた雑誌でそのことを知った3人は、戸
惑いながらも手紙に返事を書く。やがて彼らは、過去からの手紙と自分たちと
の不思議なつながりに気づくのだが……。

<レビュー>
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ある雑貨店を舞台に交錯する過去と現在

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東野圭吾のベストセラー小説を廣木隆一監督が映画化しました。

ドラマは1969年の街頭からスタートします。その街にあるナミヤ雑貨店は一見
ありふれた雑貨店。子供たちがひっきりなしに訪れています。だが、その店に
は大きな特徴があります。店主の浪矢雄治が、寄せられた人生相談の手紙に対
して、ていねいに返事を書いていたのです。

そこから時代は一気に2012年に飛びます。敦也、翔太、幸平の幼なじみ3人組
が、悪事を働いて一軒の廃屋に逃げ込んできます。そこは、かつてのナミヤ雑
貨店。そんな中、突然、シャッターの郵便受けに一通の手紙が落ちてきます。
それは1980年に書かれた悩み相談の手紙でした。店内に落ちていた雑誌で、か
つてのナミヤ雑貨店を紹介した記事を読んだ3人は、戸惑いながらも浪矢に代
わって手紙に返事を書きます。

というわけで、この物語はいわゆるファンタジーです。現在と過去がごく普通
につながって描かれます。2012年の3人の青年たちが隠れる廃屋の郵便受けに
向かって、1980年の青年が手紙を投函するシーンが何度も繰り返されます。

その青年は松岡克郎というミュージシャン志望の魚屋の長男。手紙は自分の進
路に関する相談です。手紙をやり取りするうちに、3人は松岡が作った曲を自
分たちの知り合いのシンガーが歌っていることに気づきます。

そこに隠された秘密を追求するのがこの映画の柱……。と思ったのですが、そ
の答えは、意外にあっさりわかってしまいます。なにせ人生相談だから、相談
者はまだまだいっぱいいるのです。

ちなみに、門脇麦演じるシンガーが歌うのは本作の主題歌でもある山下達郎の
『REBORN』という曲。なかなか良い曲で門脇麦が頑張って熱唱しています。

その後も様々な相談者が登場します。未婚の母になるべきかどうか迷う女性は、
やがて事故死してしまいます。それを知った浪矢は大いにショックを受けます。

一方、「愛人になれば店を持たせてやる」と言われたクラブホステスの相談に
対して、3人組の一人・敦也は、未来を予言しつつ(彼にとってはすでに知っ
ている80年代や90年代のことなので)、彼女が幸せになれるようにアドバイス
します。

そんな中、自らの死期が迫っていることを覚悟した浪矢は、自分の33回忌に一
日だけナミヤ雑貨店の相談を復活するように、息子に対して遺言します。おま
けに、そこにはかつて浪矢と駆け落ちしたという女性も登場します。

そんなふうに現在と過去が交錯する中で、たくさんの人物が登場し、たくさん
のエピソードが描かれます。そのため、話についていくのがやっとでとても感
情移入するどころではありませんでした。この映画、やはり事前に原作を読ん
でおいたほうがよいかもしれません。

とはいえ、原作が面白いであろうことは容易に想像がつきます。特に一見無造
作にばらまかれたような様々なエピソードが、ある養護施設につながっていく
あたりの展開は、さすがに東野圭吾という感じです。

廣木隆一監督は、先日公開になった「彼女の人生は間違いじゃない」のような
インディーズ作品とは違い、作家性を前面に出すことはしていませんが、セリ
フ以外の表情の長回しなどで人物の心理を切り取ろうとしているあたりに、廣
木監督らしさを感じることができました。

個人的にこの映画の最大の魅力は、役者たちの演技でした。「Hey! Say! JUM
P」の山田涼介、村上虹郎、寛一郎という3人の青年もいいのです、西田敏行、
PANTA、萩原聖人、小林薫、吉行和子、尾野真千子などの豪華&個性派の脇役陣
の演技が、いずれも素晴らいものでした。

≪ぽちの満足度≫

★★★☆☆
(82点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年9月25日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分の回


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