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ノクターナル・アニマルズ（NOCTURNAL ANIMALS）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間56分）
監督・脚本・製作：トム・フォード
出演：エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、
アーロン・テイラー＝ジョンソン、アイラ・フィッシャー、エリー・バンバー、
カール・グルスマン、アーミー・ハマー、ローラ・リニー、アンドレア・ライ
ズブロー、マイケル・シーン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.nocturnalanimals.jp/
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＜ストーリー＞
アート・ディーラーとして成功を収めているものの、夫との夫婦関係は冷え切
っているスーザン（エイミー・アダムス）。ある日、そんな彼女のもとに、20
年前に離婚した元夫エドワード（ジェイク・ギレンホール）から自作の小説が
送られてくる。そこに綴られていた不穏な物語に次第に不安を覚えていくスー
ザンだったが……。
＜レビュー＞
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元夫から贈られた小説が意味するものとは
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2009年の『シングルマン』で映画監督デビューを果たした世界的デザイナー、
トム・フォードの監督第2作。オースティン・ライトが1993年に発表した小説
「ミステリ原稿」の映画化です。
オープニングタイトルの映像が強烈です。とてつもなく太った女性が裸でダン
スをしています。肉塊いがゆらゆらと揺れます。美しいとか醜いとかいう次元
を超えて、もはや悪夢的なアートな世界です。この映画は悪夢の映画といって
もいいかもしれません。
主人公はアート・ディーラーとして成功を収めているスーザンという女性。名
だたるセレブと交流するなど華やかな生活を送る反面、夫との夫婦関係は冷え
切っています。
ある日、そんな彼女のもとに、20年近く前に離婚した元夫エドワードから自作
の小説が送られてきます。そのタイトルは「夜の獣たち（ノクターナル・アニ
マルズ）」。それはスーザンに捧げられた作品です。
そこからはその小説の内容が映像化されます。同時に、それを読む現在のスー
ザンの姿も描かれます。いったいどんな小説なのか。
登場するのは車で移動中の家族。トニーとその妻と娘。彼らは夜のハイウェイ
で、レイらに襲われます。妻と娘は彼らに拉致され、殺されてしまいます。ト
ニーはボビー・アンディーズ警部補と共に犯人たちを追い詰めていきます……。
かつてのスーザンとの結婚生活を踏まえたらしいエドワードの小説。それは暴
力に彩られた壮絶な復讐劇。小説中の妻はスーザンにそっくりで、スーザンに
とって悪夢のような内容ともいえます。いったい元夫のエドワードは、どうし
てこんな小説を書いてスーザンに捧げたのか。それが、このドラマの最大の謎
です。
それにヒントを与えるのが、途中から挿入される過去の出来事。同郷だった
スーザンとエドワードがニューヨークで再会し、つきあい始めます。スーザン
は毛嫌いしている母親からの反対にもかかわらず、エドワードと結婚します。
だが、やがて2人に隙間風が吹きます。何事にも前向きで強気なスーザンにとっ
て、エドワードのあまりの弱気が我慢できなかったのです。
はたしてエドワードの小説は、スーザンに対する復讐の思いから書かれたもの
なのか。それとも悔恨の思いがそこに隠れているのか。スーザンはエドワード
の意図をはかりかねて不安になります。
このスーザンの不安や苦悩こそが、本作の核になる部分。それをスタイリッシ
ュな映像でミステリアスに描いているのがフォード監督の真骨頂。登場人物が
着る服や部屋のデザイン、細かなディテールなど、すべてにおいてこだわり抜
き、場面場面にふさわしい映像を紡ぎ出します。まさにアートといってもいい
世界です。
この映画の結末は明快ではありません。それについては、観客の想像力に判断
をゆだねています。それもまた、アート的な雰囲気の漂うこの映画にふさわし
いものといえるかもしれません。
ストーリー展開よりも、トップデザイナーらしいスタイリッシュな映像美と、
スリリングでミステリアスな雰囲気に酔いしれる映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（83点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年11月5日（日）角川シネマ新宿にて。午後1時30分の回
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