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おじいちゃん、死んじゃったって。
（2017年 日本）（上映時間1時間44分）
監督：森ガキ侑大
出演：岸井ゆきの、岩松了、美保純、岡山天音、小野花梨、赤間麻里子、池本
啓太、五歩一豊、大方斐紗子、松澤匠、水野美紀、光石研
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.ojiichan-movie.com/
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＜ストーリー＞
彼氏とのセックス中に祖父の死を報せる電話を取った春野吉子（岸井ゆきの）。
そのことに罪悪感を抱きながらも、慌ただしく進んでいく葬儀の準備を見守る。
久々に顔を合わせたのは祖父の3人の子供とその家族。慌ただしく葬儀の準備を
進めるが、それぞれの様々な事情が表面化し、本音をぶつけ合い始める……。
＜レビュー＞
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祖父の死をきっかけにした家族と死に関する映画
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葬儀をきっかけに家族の様々な姿が見えてくるドラマ。
主人公のOL春野吉子は、彼氏とのセックス中に祖父の死を報せる電話を取りま
す。二階から、父に声をかける吉子。「おじいちゃん、死んじゃったって」。
さっそく祖父の家に家族が集まり、慌ただしく葬儀の準備を進めます。吉子の
祖母は家族の顔もわからないほどボケています。そんな中、吉子の父・清二、
母の京子、東京の大学に通う弟・清太。そして、喪主を務める叔父・昭男、そ
の元妻・ふみ江、彼らの長男・洋平、高校生の娘・千春が集まります。やがて、
地元を離れた独身の叔母・薫も駆けつけます。
そのうち清二と昭男は、すでに葬儀の準備を始める前から段取りに関して兄弟
げんかを始めます。その他の人々も、それぞれが抱えた事情が次第に明らかに
なり、不満や本音が吐き出されていきます。清二は会社を辞めてしまいました。
昭男はふみ江と離婚して一人暮らし。洋平はひきこもり。千春はそんな家庭環
境が影響しているのか、高校生なのにタバコを吸うし、酒も飲みます。
こうして兄弟の不和、家庭崩壊、親子の断絶など家族をめぐる様々な問題が噴
出します。登場人物のキャラが立っているので、それがとてもリアルに感じら
れます。それぞれの微妙な心情も伝わってきます。
そして、そんな彼らを見ているうちに吉子は思います。「なんだか悲しそうじ
ゃない」と。死に対する実感は希薄で「インドでは死体がゴロゴロ転がってい
るのだろうか」などと考える吉子ですが、何かが違うという違和感は強く持っ
ています。同時に、彼女はセックス中に祖父の死を報せる電話をとった罪悪感
も抱えています。
それなら死とはどういうものなのか。生とはどういうものなのか。吉子の戸惑
いを通して、観客もそうした問題に思いを巡らせることになります。
ただし、けっして重たい映画ではありません。全編がユーモアに満ちています。
祖母のボケっぷりなどをネタにあちこちに笑いの要素を盛り込んでいます。
後半に2台の車を使って2つの家族の関係を好転させる展開が秀逸です。その後
には、この映画最大のバトルともいえる兄弟げんかが勃発しますが、最後は両
家族とも光の差す方向へと少しだけ歩み出します。
一方、吉子の生と死に対する思いは、ラストのインドへの旅によって一つの地
平線が開けます。さりげない希望が感じられて、清々しい気持ちになれる映画
でした。
本作の監督はＣＭ界で活躍する森ガキ侑大。祖母が元気だったころの回想シー
ンや村の自然など、光を効果的に使った映像が印象的だ。花火の下でのイメー
ジショットなども鮮烈な印象を残します。山崎佐保子の脚本もよく書けていま
す。そして、何よりも主演の岸井ゆきのの抜群の存在感が魅力です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年11月7日（火）テアトル新宿にて。午後12時10分の回
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