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パターソン（PATERSON）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間58分）
監督・脚本：ジム・ジャームッシュ
出演：アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・
ヘンリー、クリフ・スミス、チェイセン・ハーモン、ウィリアム・ジャクソ
ン・ハーパー、永瀬正敏
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次
公開
ホームページ http://paterson-movie.com/
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＜ストーリー＞
ニュージャージー州パターソンに暮らすバス運転手のパターソン（アダム・ド
ライヴァー）。毎朝同じ時間に起きて愛する妻ローラ（ゴルシフテ・ファラハ
ニ）にキスして仕事に向かう。夜は愛犬マーヴィンの散歩をして、途中でバー
に立ち寄り1杯だけビールを飲む。単調な毎日ながら、ローラをはじめ周囲の
人々との交流の中から詩を創作し、自分のノートに書き続けるパターソンだっ
たが……。
＜レビュー＞
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市井の詩人の一週間。何も起きないけれど温かい
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独特の世界観を持つジム・ジャームッシュ監督の新作。この映画には起伏のあ
るドラマはまったくありません。にもかかわらず、スクリーン全体から独特の
味わいがジワジワとにじみ出ています。
舞台となるのは、アメリカ・ニュージャージー州のパターソンという街。そし
て主人公の男の名前もパターソン。
パターソンは路線バスのバス運転手をしています。毎朝同じ時間に妻ローラの
隣で起きて、同じメニューの朝食をとり、仕事に向かいます。夜は愛犬マーヴ
ィンの散歩をして、途中でバーに立ち寄り1杯だけビールを飲みます。そんな彼
の一週間を描いたのがこの映画です。
はた目には単調な日々ではあるものの、そこには微妙な違いもあります。例え
ばバスの窓から見える街の風景。あるいは乗客たちの会話。それを聞いてパ
ターソンは、少しだけ表情を変えます。行きつけのバーでは、マスターや常連
客と毎日様々な会話をします。
そして、何より日々に彩りを加えるのが奥さんのローラです。アートに興味が
あるのか、部屋のカーテンをはじめインテリアに斬新なデザインを施し、市場
でカップケーキを焼いて販売し、うまくいったらビジネスにしたいと目論みま
す。さらに、突然ギターを購入して、いずれはカントリー歌手になりたいと言
い出します。
そんな日々の中から、パターソンは詩を創作し、それをノートに書き留めてい
ます。ローラは「発表しろ」と勧めますが、本人にはその気がないようです。
その詩をスクリーンに映すとともに、パターソン自身が朗読するのがこの映画
の特徴。それは、妻への愛をはじめ日常の中から紡ぎ出される詩です。その詩
の世界がパターソンの日常とリンクして、何ともほほえましく穏やかな気持ち
になってきます。
それ以外にも、コインランドリーで自作のラップを練習する男、詩を作る少女
など、詩は様々な形でこの映画に登場します。
ユーモアもタップリです。いつも「最低だ」と身の回りの出来事をぼやくバス
会社の社員、変わった料理を作ってパターソンを困らせるローラ、そして何よ
りもブルドックのアーヴィンの人を食ったような行動が笑いを誘います。
冒頭でのローラの「双子の子供ができた夢を見た」という発言を受けて、それ
以降、何度も双子が登場するというのも、ユーモラスであるのと同時に独特の
世界観を感じさせます。パターソンが気に入っているマッチ箱、毎日持参する
サンドイッチと妻の写真入りのランチボックスなど小物へのこだわりも特徴的
です。
終盤では、パターソンとローラが、アボットとコステロの昔の映画を観に行き
ます。ノスタルジックで温かな気持ちにさせてくれるシーンです。
ただし、その後にはこの映画で最大の波乱が起きます。虚ろな表情で、滝に面
した公園のベンチに座るパターソン。そこで登場するのが永瀬正敏演じる日本
から来た詩人です。彼の存在がパターソンを救い、最後は再び穏やかでほのぼ
のした空気感のままエンディングを迎えます。
これほど何も起きないのに、これほど温かな心持にさせられる映画はめったに
ありません。ジム・ジャームッシュ監督ならではの映画といえるでしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年8月26日（土）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時10分の回
[「は」のページ]
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