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ポルト（PORTO）
（2016年 ポルトガル・フランス・アメリカ・ポーランド）（上映時間1時間16分）
監督：ゲイブ・クリンガー
出演：アントン・イェルチン、リュシー・リュカ、フランソワーズ・ルブラン、
パウロ・カラトレ
＊新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://mermaidfilms.co.jp/porto/
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＜ストーリー＞
ポルトガル北部の港湾都市ポルト。26歳のアメリカ人のジェイク（アントン・
イェルチン）は、家族が住むリスボンを離れてこの地で暮らしていた。一方、3
2歳の考古学を学ぶフランス人留学生マティ（リュシー・リュカ）は、ソルボン
ヌの大学で知り合ったポルトガル人の教授ジョアンとともにこの地にやって来
た。ある日、考古学調査の現場で互いの存在に気づいた2人はカフェで再会し、
引っ越してきたばかりのマティの新居で一夜をともにするのだが……。
＜レビュー＞
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ありふれた異国のラブストーリーを魅惑的に見せる仕掛け
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ポルトガル北部の港湾都市ポルトを舞台にしたアメリカ人の男とフランス人の
女によるラブストーリー。話自体は陳腐ですが、それをあの手この手で魅惑的
に仕上げています。
主人公は26歳のアメリカ人のジェイク。家族が住むリスボンを離れてこの地で
暮らしています。一方、32歳の考古学を学ぶフランス人留学生マティは、ソル
ボンヌの大学で知り合ったポルトガル人の教授ジョアンとともにこの地にやっ
てきました。
そんなある日、考古学調査の現場でジェイクとマティは互いの存在に気づきま
す。ジェイクは臨時雇いの作業員として、そこで働いていたのです。その後カ
フェで2人は再会し、マティはジェイクに引っ越しの手伝いを頼みます。そして、
まだ家具もベッドもない新居で一夜の関係を結ぶのでした。
だが、翌日の昼過ぎにジェイクが起きるとすでにマティはおらず、しばらくす
ると彼女は恋人のジョアンと一緒に帰ってきます。気まずい雰囲気で過ごす3人。
その後も、あの夜を忘れられないジェイクはマティにしつこくつきまといます。
だが、今の生活を壊すつもりのないマティ。マティの通報により、ジェイクは
留置所に入れられて絶望します。
数年後。ジェイクは、ポルトで相変わらずの生活を送っています。それに対し
て、マティはジョアンとの間に娘をもうけるが、夫との関係は壊れています。
そんな2人のドラマを3章に分けて描きます。ユニークなのはスクリーンサイズ
が、8ミリ、16ミリ、35ミリと変化すること。また、そこに描かれる映像も様々
に変化します。
さらに、この映画では時制が明確になりません。発掘現場での2人の出会い、カ
フェでの会話、新居でのセックスなど、過去と未来の出来事がぶつ切りにされ
て行き来し、いったい何が現在の出来事で、何が過去の出来事なのかさえわか
らなくなってきます。
それを通して2人が、それぞれ抱えているものが少しずつ見えてきます。ジェイ
クは家族と折り合いが悪く、定職もなく、友人もおらず、心を通わせるのは愛
犬のみの孤独な人生です。一方、マティは年上のポルトガル人教授との関係に
悩むだけでなく、心を病んで病院に入っていたこともあるようです。その病は
今も癒えていません。
それによって、ただの行きずりの刹那的に見えた一夜の関係が、2人にとっては
必然であり、それゆえ、いつまでも心から消せないことがわかってくるのです。
ラストは見つめあう2人。その表情を延々と映します。はたして、それは何を物
語るのか。解釈は人それぞれでしょうが、切なさが漂います。
この映画の監督は、第70回ベネチア国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を
受賞し、本作で長編劇映画デビューを果たしたゲイブ・クリンガー。その才能
を評価したジム・ジャームッシュが製作総指揮を務めています。
それにしても主演のアントン・イェルチンの事故死が惜しまれます。まだ27歳
でこれからの活躍が楽しみな俳優だったのですが。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（81点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年10月11日（水）新宿武蔵野館にて。午前9時45分の回
[「ほ」のページ]
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