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聖杯たちの騎士（KNIGHT OF CUPS）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間58分）
監督・脚本：テレンス・マリック
出演：クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマ
ン、ブライアン・デネヒー、アントニオ・バンデラス、ウェス・ベントリー、
イザベル・ルーカス、テリーサ・パーマー、フリーダ・ピント、イモージェ
ン・プーツ
＊ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開
ホームページ http://seihai-kishi.jp/
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＜ストーリー＞
脚本家のリック（クリスチャン・ベイル）は、ハリウッド映画の仕事を引き受
けたことをきっかけに、セレブな世界で享楽的な日々を送るようになる。一方
で、崩壊した家族の絆を取り戻そうと奔走するリック。心の奥底に怯えや虚し
さを抱えていた彼は、愛を求めて6人の美女と巡り会っていくのだが……。
＜レビュー＞
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ただ圧倒されるテレンス・マリック監督の映像美
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テレンス・マリック監督は人前に出ることを徹底して拒否してきたため、一時
は架空の存在ではないかなどと言われていた人物。どうやら、その噂は否定さ
れたようですが、いずれにしても謎めいた監督です。20年近く現場から遠ざか
っていたこともありますが、最近はけっこうコンスタントに映画を撮っていま
す。
そんな彼の新作は、ある脚本家のお話（もしかしたら、自伝的要素があるのか
しら）。詳しい説明がないので、よくわからないところも多いのですが、主人
公のリックはハリヴッド映画の仕事を引き受けたことから、セレブ生活を送る
ようになった模様。パーティー、酒、女、ドラッグという享楽的な日々を過ご
します。
その一方で、彼は崩壊した家族の関係を取り戻そうとします。空虚感や悩みを
抱えた彼は、様々なタイプの6人の女たちと巡り合う中で、自身の生きてきた道
のりを見つめ直していきます。
というわけで、主人公の女遍歴が中心のドラマではあるものの、そこに結婚生
活が破たんした妻の存在、確執を抱える父親や弟との関係などが絡んできます。
登場人物の独白を中心に進行。それを通して、空虚感にさいなまれ、道に迷っ
ているリックをはじめ、様々な人物の心理が伝わってきます。哲学的で人間の
本質を突いたようなセリフもたびたび飛び出して、ドラマに深みを与えていま
す。
ただし、この映画、はっきり言ってストーリーはどうでもいいです。圧倒され
るのはその映像美。初期の作品から、半端でない映像へのこだわりを見せてい
たテレンス・マリック監督ですが、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得
し、オスカー監督賞候補にもなった『ツリー・オブ・ライフ』以降の作品は、
それにますます拍車がかかっています。
とにかく一つとして陳腐な映像がありません。自然美、街の景観、夜景、水中
映像、室内シーンなど、ありとあらゆる場面が美しく描かれます。光、色彩、
カメラワーク、ロケ場所の選定やセットなど、全てがこだわりまくって撮影さ
れています。通常なら普通に撮るシーンまで、ひとひねりが加えられています。
撮影監督は『ゼロ・グラビティ』『バードマン あるいは（無知がもたらす予
期せぬ奇跡）』『レヴェナント 蘇えりし者』で3年連続アカデミー撮影賞を受
賞したエマニュエル・ルベツキ。このコンビなら、こういう映像になるのも納
得です。これはもはやビジュアルアート、それも世界最高峰のビジュアルアー
トといってもいいでしょう。
美術畑ではなく、クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ナタ
リー・ポートマンなどのトップスターを揃えて、商業映画の枠内でこういうこ
とをやれるのは、マリック監督だけかもしれません。
なので、映像を観ているだけで最後まで飽きませんでした。ドラマとしてはと
もかく、アートとしては一級品の映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（80点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年1月9日（月・祝）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後12時25分
の回
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