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草原に黄色い花を見つける
（YELLOW FLOWERS ON THE GREEN GRASS）
（2015年 ベトナム）（上映時間1時間43分）
監督：ヴィクター・ヴー
出演：ティン・ヴィン、チョン・カン、タイン・ミー、マイ・テー・ヒエップ、グエン・アイン・トゥー、カイン・ヒエン、ミー・アイン
＊新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://yellow-flowers.jp/
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＜ストーリー＞
1980年代後半のベトナム中南部の貧しい農村。ティエウ（ティン・ヴィン）とトゥオン（チョン・カン）の兄弟は、いつも一緒に遊ぶ仲の良い兄弟。思春期を迎えた12才の兄ティエウは、近所に住む少女ムーン（タイン・ミー）に恋心を抱くが、うまく想いを伝えることができない。そんなある日、ムーンの家が火事になってしまい、彼女は兄弟の家に身を寄せることになる。ますますムーンを意識するティエウだったが、なぜか彼女はトゥオンとばかり遊んでいる。2人の仲に嫉妬したティエウは、取り返しのつかないことをしてしまう……。
＜レビュー＞
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兄弟と一人の少女。ノスタルジックで切ない初恋物語
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ベトナムでベストセラーになった小説を、アメリカ生まれでハリウッドで映画を学んだ後に祖国ベトナムに戻ったという新鋭ヴィクター・ヴー監督が映画化しました。
舞台になるのは、1980年代のベトナム中南部の貧しい農村。そこで暮らす兄弟と一人の少女による初恋物語です。
序盤に映る農村の大自然の風景が美しく、のどかです。この詩情あふれる風景が、緩やかな音楽とも相まって、映画全体のトーンを支配しています。
ティエウとトゥオンは、いつも一緒に遊ぶ仲の良い兄弟です。ティエウは弟に何かと気を遣い、トゥオンも兄を慕っています。
そんな2人にダンおじさんは、お姫様と白い虎にまつわる悲しい話を聞かせます。この話は兄弟の心に印象深く残り、その後のドラマに様々な影響を与えます。また、トゥオンが気に入っているヒキガエルとお姫様のファンタジックなおとぎ話も、この映画の後半で大きな役割を果たします。
というわけで、仲の良い兄弟ではあるのですが、そこには年齢の違いがあります。あくまでも純真で明るい弟トゥオンに対して、12才の兄ティエウは思春期を迎えて揺れ動く感情を抱えています。
まもなく、兄ティエウは近所に住む少女ムーンに恋心を抱くようになります。しかし、そこはやはり初恋。うまく相手に想いを伝えることができません。
それでもトゥオンは、兄のことを一生懸命に応援します。兄の恋に横槍を入れて暴力をふるったいじめっ子に対して、弟は敢然と復讐を果たします。
そんな中、ムーンの家が火事になってしまいます。彼女の母親は父親を捜しに町へ行ってしまいます。ムーンは一人ぼっちになり、ティエウの母親は「一晩泊ってあげなさい」と言います。
こうしてムーンの家で一夜を過ごすことになったティエウ。この時の2人のほのかな交流が秀逸。何という初々しい恋なのでしょう。あまりの初々しさに、観ているこちらも思わず微笑んでしまいました。
とまあ、ここまでは素敵な初恋物語なのですが、その後に波乱が起きます。火事の後、ムーンは母親が迎えに来るまで兄弟の家で過ごすことになります。そうなると、当然、ティエウはますますムーンのことが気になって仕方なくなります。
ところが、ムーンはトゥオンと気が合ったのか、彼と仲良く遊ぶようになります。それを見たティエウは心が乱れます。抑えようのない嫉妬心が頭をもたげ、彼は取り返しのつかないことを起こしてしまいます。
そこから先の展開は伏せますが、ティエウの初々しい恋心だけでなく、嫉妬心、罪悪感などいかにも思春期らしい千々に乱れる心理を、繊細に表現しきった演出が見事です。
終盤は、おとぎ話を効果的に使った語り口。トゥオンの苦境からの脱出に向けて、実際におとぎ話のお姫様を現出させ、それにまつわるある父娘の悲劇を語る展開。それでも最後に待っているのは希望です。
最後の最後にティエウはトゥオンからムーンの真意を知らされます。何とも温かで、観客をホッとさせてくれるエンディングです。
青春映画の肝は、瑞々しさやキラキラ感です。もちろんこの映画にはそれがあります。同時にほろ苦さや痛み、苦しみ、残酷さなども描き込まれています。それらをひっくるめて、観客は自分の「あの頃」を思い出して、ノスタルジックで、切ない気持ちになるのではないでしょうか。
兄ティエウを演じたティン・ヴィン、弟トゥオンを演じたチョン・カンの演技もなかなかのものですが、白眉はムーン役のタイン・ミー。何ですか？この可愛さは。まるでお人形さんじゃないですか。そりゃあ、ティエウならずともみんな好きになっちゃいますよ。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年8月20日（日）新宿武蔵野館にて。午後4時45分の回
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