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素晴らしきかな、人生（COLLATERAL BEAUTY）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間37分）
監督：デヴィッド・フランケル
出演：ウィル・スミス、エドワード・ノートン、キーラ・ナイトレイ、マイケ
ル・ペーニャ、ナオミ・ハリス、ジェイコブ・ラティモア、ケイト・ウィンス
レット、ヘレン・ミレン
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/subarashiki-movie/
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＜ストーリー＞
ニューヨークの広告代理店で成功を収めたハワード（ウィル・スミス）。だが、
６歳の愛娘を亡くしたことから悲しみで自暴自棄となり、自分を見失ってしま
う。ハワードに頼り切りだった会社は傾き始め、同僚のホイット（エドワー
ド・ノートン）、サイモン（マイケル・ペーニャ）、クレア（ケイト・ウィン
スレット）は、ハワードをどうにかして救わなければと考える。そんな中、ハ
ワードの前に、性別も年齢もバラバラな３人の奇妙な舞台俳優（ヘレン・ミレ
ン、キーラ・ナイトレイ、ジェイコブ・ラティモア）が現われる……。
＜レビュー＞
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リアルとファンタジーの狭間で描く自分を見失った男の再生劇
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『プラダを着た悪魔』のデヴィッド・フランケル監督による、ちょっと変わっ
たタイプの映画です。
冒頭は、ウィル・スミス演じるキレ者広告マンのハワードが、仲間の前でス
ピーチするシーン。成功者らしく自信満々に、「愛」「時間」「死」をキー
ワードにビジネスをするというポリシーを披瀝します。これが後の話の伏線に
なります。
続いて、舞台はいきなり3年後に飛びます。ハワードは6歳の娘を亡くして、自
暴自棄になり、自分を見失っています。会社には来るものの、巨大なドミノ倒
しをつくって時間を潰しています（実はそのドミノに理由があることが最後に
わかります）。
そんなハワードに対して共同経営者のホイットは困惑します。何しろ会社はハ
ワードが頼り。彼がまともに仕事をしないので、どんどん顧客が離れ、買収話
が持ち上がっています。幹部のサイモンとクレアも、何とかしなければと焦り
ます。
そんな中、ハワードの前に「愛」「時間」「死」を名乗る3人の男女が次々に現
れ、彼の現状を非難します。さぁて、この謎の3人は誰なんでしょう？
て、バレバレじゃないか！ そうなんです。実はこの3人は、ある計画を思いつ
いたホイットたちが依頼した舞台俳優なのです。その依頼に至る経緯がつぶさ
に描かれます。これって、どうなんだ？ 3人の身元は謎のままにして、最後の
ほうで明かすのがベストなんじゃないの？
と思ったのですが、最後まで観てその考えは変わりました。最初はリアルな存
在に思えた3人の舞台俳優ですが、そうとは断定できない場面が時々登場します。
もしかしたら、彼らは本当に「愛」「時間」「死」を象徴するこの世のもので
はない存在かもしれない。そんなことまで思わせられてしまうのです。
こんなふうに、リアルとファンタジーの狭間でドラマを展開させるのがこの映
画のユニークなところ。もしかしたら自分の空想の産物かもしれない3人の舞台
俳優たちとの出会いで、ハワードの心は次第に溶け始めます。
同時に彼らを雇ったホイット、サイモン、クレアもそれぞれに、親子関係、病
気。孤独といった悩みを抱えており、それが3人の舞台俳優によって少しずつ新
たな方向へ進み始めます。
ラストに用意されていたのは驚きの事実。え、あの2人ってそういう関係だった
の？ いやぁ、全然わからなかったなぁ。
何だか良質な小説を読んでいるような映画でした。かなり抽象的な素材なのに、
脚本、演出とも絶妙のさじ加減で、難解さや押しつけがましさを消しています。
役者の演技も見事。極端にセリフの少ない中で、ハワードの心理を繊細に表現
したウィル・スミスの演技はもちろん、同僚役のエドワード・ノートン、ケイ
ト・ウィンスレット、マイケル・ペーニャ、舞台俳優を演じたヘレン・ミレン、
キーラ、ナイトレイなども、このドラマを引き立てています。
派手さはまったくない映画ですが、心にジンワリとしみ込んできました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年2月26日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回
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