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サバイバルファミリー
（2017年 日本）（上映時間1時間57分）
監督・脚本・原案：矢口史靖
出演：小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、葵わかな、時任三郎、藤原紀香、大
野拓朗、志尊淳、渡辺えり、宅麻伸、柄本明、大地康雄、菅原大吉、徳井優、
桂雀々、森下能幸、田中要次、有福正志、左時枝、ミッキー・カーチス
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://survivalfamily.jp/
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＜ストーリー＞
東京に暮らす鈴木家。仕事一筋の父（小日向文世）、のんびり屋の母（深津絵
里）、無口な長男（泉澤祐希）、おしゃれとスマホに夢中の長女（葵わかな）
の４人家族。そんなある日、いきなり電気が消滅する。電化製品はもちろん、
電車や自動車、ガス、水道、乾電池などがすべて止まり、1週間たっても元に戻
らなかった。水も食料もままならずに、困った一家は東京を離れることを決断
する。母の父（柄本明）が住む鹿児島へ自転車で向かうのだが……。
＜レビュー＞
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現代社会への問題提起を感じさせる家族の成長と再生のドラマ
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『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』などで
おなじみの矢口史靖監督の映画。家族によるロードムービーです。
東京で暮らす鈴木一家は、父、母、大学生の息子、高校生の娘の4人家族。ある
日、突然、電気が届かなくなり、電化製品はもちろん、電車や自動車、ガス、
水道、乾電池などがすべて止まります。最初はすぐに復旧すると楽観視してい
たものの、1週間たっても元に戻らず東京は大混乱に。水や食料にも不自由する
中で、父は東京を離れて母の実家のある鹿児島へ行くことを宣言します。家族
は渋々それに従い、飛行機も飛ばないため自転車での旅を始めます。
鹿児島を目指す100日近い旅の途中で、鈴木一家は様々なことを経験します。ど
んどん減っていく水や食料。慣れない野宿。高速道路は徒歩で脱出する人でい
っぱいだし、トンネルは真っ暗で案内人なしでは歩けません。サバイバル生活
をポジティブに楽しむ家族や、養豚農家のおじさんとの出会いもあります。
そうした中で、家族は少しずつ成長していきます。映画の冒頭で魚さえさばけ
なかった家族が、豚を解体処理するシーンが印象的。同時に数々の経験を通し
て、最初は身勝手でバラバラだった家族が絆を強めていきます。
というわけで、この映画は家族の成長と再生のドラマなのですが、それだけで
は終わりません。劇中では突然襲った異常事態の中、電気や水道、物流、交通
機関などがストップして人々は右往左往します。水や食料にも事欠いて、スー
パーやコンビニに行っても十分に手に入りません。法外な値段でそれらを売り
つける人々も現れます。
これって、阪神淡路大震災や東日本大震災のあとの状況と似ていませんか？
しかも手持ちカメラを多用して、それをますますリアルに見せていきます。だ
から、観客はスクリーンの中の出来事が、けっして絵空事に思えないわけです。
終盤は様々なピンチが家族を襲います。はたして一家は生き延びて、鹿児島に
着くことができるのか。
矢口監督の過去の作品のイメージでこの作品を観ると、期待を裏切られるかも
しれません。全体がコメディー仕立てだし、笑えるところもあちこちに挟まれ
ているのですが、突き抜けた楽しさはありません。その代わり、観客にいろい
ろなことを考えさせる映画です。矢口監督の新境地を感じさせます。
映画の最後に登場するのは、2年半後にようやく元に戻った東京の夜景。まばゆ
い人工の明りが輝いています。一方、映画の前半では停電によって真っ暗にな
った東京の夜景が描かれます。そこでは星が美しく輝き、天の川が夜空にくっ
きりと浮かびます。
もしかしたら、これこそが矢口監督が描きたかったものなのかもしれません。
東日本大震災から6年が経つ今、相変わらず電気に頼りっぱなしで、便利さだけ
を追い求める生活モードに対して、疑問を投げかけていると見るのは考えすぎ
でしょうか。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（83点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年2月16日（木）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時45分の回
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