|
スウィート１７モンスター（THE EDGE OF SEVENTEEN）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間44分）
監督・脚本：ケリー・フレモン・クレイグ
出演：ヘイリー・スタインフェルド、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ブレ
イク・ジェナー、キーラ・セジウィック、ヘイデン・セットー、アレクサン
ダー・カルヴァート、ウディ・ハレルソン
＊ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて公開
ホームページ http://www.sweet17monster.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
イケメンでモテモテの兄ダリアン（ブレイク・ジェナー）とは対照的に、キス
の経験さえないイケてない毎日を送る17歳の女子高生ネイディーン（ヘイ
リー・スタインフェルド）。妄想だけが空まわりして、教師のブルーナー（ウ
ッディ・ハレルソン）や母親（キーラ・セジウィック）を困らせていた。そん
なある日、たった一人の親友クリスタ（ヘイリー・ルー・リチャードソン）が、
ダリアンとつきあい始める。それを知ったネイディーンはショックを受けるの
だが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダメダメ女子高生の成長をユーモアとともに描く
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ダメダメ女子高生の成長をユーモアとともに描いた青春映画です。主人公の17
歳の女子高生ネイディーンは、キスの経験さえないイケてない女の子。モテモ
テのイケメンに成長した天敵の兄ダリアンと、夫の死から立ち直れない母親の
もとでダメダメな毎日を送っています。そんな中で、小さな頃に知り合ったク
リスタだけがたった一人の親友です。ところが、あろうことか、そのたった一
人の親友が兄とつきあい始めてしまったからさあ大変……。
イケてないダメ女などというと、無口で引っ込み思案な性格だと思うかもしれ
ません。しかし、ネイディーンは違います。ふてくされた顔でひたすら喋りま
くります。彼女は自分の容姿や性格を嫌い、強烈な自己嫌悪に陥っています。
そして嫉妬心、孤独感、不安感、反抗心など様々な感情を抱えています。それ
を周囲に毒舌という形でぶつけるのです。突然、突拍子もない行動に打って出
ることもあります。これぞまさにタイトル通りのモンスター。
しかし、観客はネイディーンを嫌いになれないはず。何しろその言動が面白す
ぎます。憎まれ口にもどこか愛嬌があります。おかげで、この映画にはたくさ
んのユーモアがまぶされています。
そんなネイディーンを絶妙に演じているのが、ヘイリー・スタインフェルド。
どこかで聞いた名前だと思ったら、コーエン兄弟の『トゥルー・グリッド』で
父の復讐を狙う14歳の少女を演じたあの子ではありませんか！ 彼女の魅力が
この映画をキラキラと輝かせています。
親友と天敵である兄との交際発覚によって、一気に爆発してしまうネイディー
ン。さらに、様々なハプニングが起きて、彼女はボロボロになります。そこを
救うのがウディ・ハレルソン演じるブルーナー先生です。この人の劇中でのネ
イディーンに対する接し方が、実に素晴らしい。
様々な出来事を通してネイディーンは成長していくのですが、その描き方も自
然で無理がありません。実はネイディーン自身にも「現状を打破したい」「周
囲とつながりたい」という思いがあります。それが成長の過程でチラチラと見
えてくるから納得できるわけです。
ラストは、彼女の成長をクッキリとスクリーンに刻み付けます。ダリアン、母、
クリスタ、韓国系の同級生アーウィンなどと新たな関係を築くネイディーン。
ネイディーンが抱えた思いは、誰でも17歳の頃に経験したことだと思います。
だから、なおさら心にグッときてしまいます。ここ数年に観た青春映画でも、
上位に入る秀作だと思いました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年4月22日（土）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後12時30分の回
[「す」のページ]
|