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ウィッチ（THE WITCH）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間33分）
監督・脚本：ロバート・エガース
出演：アニヤ・テイラー＝ジョイ、ラルフ・アイネソン、ケイト・ディッキー、
ハーヴィー・スクリムショウ、エリー・グレインジャー、ルーカス・ドーソン
＊新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.interfilm.co.jp/thewitch/
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＜ストーリー＞
1630年、ニューイングランド。信仰に篤いウィリアム（ラルフ・アイネソン）
は、教会と衝突して入植地から追放されてしまう。妻キャサリン（ケイト・デ
ィッキー）と５人の子どもたちとともに、森の近くの荒れ地に移り住んだウィ
リアムだが、ある日、長女トマシン（アニヤ・テイラー＝ジョイ）が子守りを
していた時に赤ん坊のサムが忽然と消えてしまう。その後も一家には説明のつ
かない不幸が襲い、家族は魔女の仕業に違いないと思うようになる。そして、
トマシンに疑いの目が向けられていくのだが……。
＜レビュー＞
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魔女よりも怖いのは人間の異常な心理！？
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「ウィッチ＝魔女」。その名の通り、魔女をネタにしたホラー映画です。
17世紀のアメリカ。ニューイングランドの入植地からウィリアムという男が追
放されてしまいます。どうやら、彼はあまりにも信仰心が篤く、教会と衝突し
てしまったようです。仕方なくウィリアムは、妻キャサリンと５人の子どもた
ちとともに、森の近くの荒れ地に移り住み、自給自足の生活を送るようになり
ます。
そんなある日、長女のトマシンが赤ん坊のサムを相手に「いないいないばあ」
をしていると、サムが忽然と姿を消してしまいます。サムは見つからず、ウィ
リアムは「狼にさらわれたんだ。あきらめろ」と言います、しかし、妻のキャ
サリンは大いに傷つき、トマシンにつらく当たるようになります。
低予算のインディーズのホラー映画のはずなのに、とてもそうは思えません。
冒頭からラストまで見事な映像が続きます。セットも衣装もチープさは全くな
し。むしろ格調や荘厳ささえ感じさせる映像です。そして、それらを通じて醸
し出される不穏な雰囲気が絶品です。音も効果的に使われて、ますます不気味
で不穏な空気が強まります。
魔女の痕跡は早くから登場します。赤ん坊のサムがさらわれた時に現れる不可
思議な映像。あれは間違いなく魔女による行動でしょう。ただし、それが現実
なのか幻覚なのかは、曖昧なまま進んでいきます。
赤ん坊の消失だけでなく、一家には説明のつかない様々な不幸が続きます。凶
作が続き、獲物もなく生活は困窮し、夫婦は仲違いし始めます。
そんな中、決定的な出来事が起きます。長男の失踪です。姉のトマシンが奉公
に出されると知った彼は、何か策があるらしく馬で町に行こうとします。しか
し、トマシンは「自分も連れていけ」といい、2人は一緒に森に入り込みます。
そして、まもなく長男は姿を消します。
彼が姿を消す過程でも、魔女らしき人物が現れて彼を誘惑するのですが、それ
もまた現実なのか幻覚なのか曖昧な描写になっています。やがて戻ってきた長
男は、何かに呪われたようにまったく違う姿になっています。そして、その果
てに死んでしまいます。
ここに至って、ウィリアムと妻は「これは魔女の仕業に違いない」と信じ込む
ようになります。おりしも、双子の子供たちは「魔女はトマシンだ！」と主張
します。実は、トマシンは言うことを聞かない双子の片割れに「私は魔女だ」
と脅かしたことがあるのです。
それを聞いた両親はトマシンを疑います。一方、トマシンは「双子こそが魔女
だ」と主張します。こうして、どんどん疑心暗鬼が渦巻く一家。そして待って
いるのはカオス。取り返しのつかない事態です。
基本はホラー映画。なので、唐突に出現する魔女や、いかにも怪しげなウサギ
や黒ヤギなどの動物たちを使い、ホラー映画らしい怖さを生み出しています。
ただし、そこには単なるホラー映画を越えた魅力があります。それは人間の異
常な心理ドラマです。ウィリアム一家は強い信仰心を持ち、自分たちは罪人で
あるとして、すべてを神に委ねた生活を送っています。そんな彼らに災いが
次々に降りかかることで、混乱ぶりが倍加されていきます。
信仰に対する揺らぎ、家族に対する疑念、得体の知れない恐怖、その果てに直
面する絶望など、濃密な心理劇を展開しているのがこの映画の特徴です。おか
げで、ウソ臭さを感じることもなく、素直にその怪し気な世界に入り込んでし
まいます。本当に怖いのは魔女よりも、人間の心理かもしれません。
ラストシーンも意味深です。トマシンは本当に魔女になったのか。それとも、
あれもまたただの幻覚なのか。皆さんはどう考えるでしょうか。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年8月9日（水）新宿武蔵野館にて。午後12時5分の回
[「う」のページ]
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