追憶

（2017年　日本）（上映時間1時間39分）
監督：降旗康男
出演：岡田准一、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、矢島健一、北見敏
之、安田顕、三浦貴大、高橋努、渋川清彦、りりィ、西田尚美、安藤サクラ、
仁科涼子、吉岡秀隆
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ　http://tsuioku.jp/
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＜ストーリー＞
富山県の漁港で殺人事件が発生する。刑事の四方篤（岡田准一）が現場に駆け
つけると、被害者は幼なじみの川端悟（柄本佑）だった。容疑者として浮上し
たのは、同じく２人の幼なじみで、能登半島で土建会社を営む田所啓太（小栗
旬）だった。今から25年前、親に捨てられた３人は、喫茶店を営む涼子（安藤
サクラ）の元に身を寄せ、家族同然に暮らしていたのだった。だが、ある出来
事を機に彼らは散り散りになっていた……。

＜レビュー＞
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昭和の香りが漂う世界を若手俳優が演じる
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高倉健主演の『夜叉』『鉄道員（ぽっぽや）』をはじめ、数々の名作を手がけ
た大ベテランの降旗康男監督と撮影の木村大作が9年ぶりにタッグを組んだ映画。
いかにも日本映画らしい情感あふれる世界が展開します。

殺人事件をめぐるサスペンスと人間ドラマが融合した映画です。最初に描かれ
るのは、25年前の出来事。主人公の四方篤をはじめ川端悟、田所啓太という親
に捨てられた３人の子供たちが、喫茶店を営む涼子という女性のところに身を
寄せ、何かと面倒を見てもらいます。そんな中、涼子を苦しめる悪い男の存在
に業を煮やした３人は、その男を殺そうとします。その事件をきっかけに、彼
らは散り散りになります。

続いて描かれるのは25年後の事件。成長して富山で刑事になった四方は、ラー
メン屋で突然、川端悟から声をかけられます。25年ぶりの再会です。川端は東
京でガラス店を営んでいるものの、経営が苦しく、能登半島で土建会社を営む
田所啓太に金を借りに来たといいます。

その翌日、殺人事件が起きて、四方が現場に駆けつけると、被害者はなんと川
端ではありませんか。しかし、彼は川端と昨夜会ったことを誰にも言いません。
それが知られれば、25年前の出来事に行きつく可能性があります。そこで彼は
独自に捜査を始めます。疑わしいのは、当然ながら川端が会うと言っていた田
所です。四方は25年ぶりに田所に会いに行きます。しかし、田所は頑なに口を
閉ざします。

サスペンスと人間ドラマが融合した映画だと言いましたが、サスペンス的な面
白さはあまりありません。むしろ、過去の傷を背負った３人の男たちの葛藤を
描くことに注力します。

彼らは今も25年前の事件を抱えて生きています。表面的には心の奥に閉じ込め
て鍵をかけているようでも、常に彼らの生き方に影響を及ぼしています。四方
は子供を失ったことをきっかけに妻と別居し、問題を起こしてばかりいる実母
とぶつかります。川端は妻の父親から引き継いだ店を守るために、あらゆる犠
牲を払おうとします。そして、田所も妻の父親の土建会社を引き継いでいます。
おまけに妻は出産間近です。

そんな彼らの心の内をじっくりとあぶりだす降旗康男監督。同時に、彼らの家
族や涼子を慕う男の思いなども、きちんと描き出していきます。

撮影の木村大作の映像も見事です。特に北陸の海の荒々しい波、美しい夕日な
どの自然風景が素晴らしい。登場人物の心象風景をそのまま投影したような映
像です。また、千住明による情感に満ちた音楽も、この映画にふさわしいもの
です。

３人の幼なじみを演じた岡田准一、小栗旬、柄本佑に加え、四方の妻を演じた
長澤まさみ、田所の妻を演じた木村文乃なども陰影に富んだ演技を見せていま
す。この映画が遺作となったりりィも、四方の母の悔恨の人生を全身で表現し
ています。

この映画で残念なのは終盤のバタバタ感です。特に殺人事件の真相には拍子抜
け。また、田所の妻の出産にまつわる経緯と、それに関係して彼女の出生の秘
密が語られるあたりも、何だか唐突な感じです。ここまですべてが急速に収束
されると、違和感を持たざるを得ないところです。

それでも昭和の香りのする映画の伝統を、こういう形で継承した点で意味のあ
る映画だと思いました。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（79点）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

〔鑑賞データ〕
2017年5月19日（金）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分の回

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