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美しい星
（2016年 日本）（上映時間2時間7分）
監督：吉田大八
出演：リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子、佐々木蔵之介、羽場裕一、春田純一、友利恵、若葉竜也、坂口辰平、藤原季節、赤間麻里子、武藤心平、川島潤哉、板橋駿谷
＊TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/hoshi/
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＜ストーリー＞
予報が当たらないことで有名なお天気キャスター・大杉重一郎（リリー・フランキー）は、妻の伊余子（中嶋朋子）と、フリーターの息子・一雄（亀梨和也）、女子大生の娘・暁子（橋本愛）の家族４人で暮らしていた。そんなある日、重一郎は車を運転中に不思議な光に包まれたのをきっかけに自分が火星人だと自覚する。さらに息子の一雄が水星人、娘の暁子が金星人として次々と覚醒し、それぞれの方法で地球を救うために行動を開始するのだが……。
＜レビュー＞
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宇宙人に覚醒した家族の再生のドラマ
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三島由紀夫が書いたという珍しいＳＦ小説を、『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』の吉田大八監督が映画化しました。地球温暖化などの話を前面に足して現代風にアレンジしているようです。
主人公はお天気キャスターの大杉重一郎。しかし、彼の予報は当たらないことで有名です。冒頭は、そんな彼がレストランで家族と食事するシーン。妻の伊余子と女子大生の娘・暁子。ただし、フリーターの息子・一雄がなかなか現れず、重一郎はイラついています。しかも、彼は家族に隠れて愛人に電話します。
とくれば、これはどう考えても崩壊しかけた家族。彼らが再び絆を結ぶまでのドラマが、この映画の大きな要素だとわかります。
しかし、それを奇想天外な形で実現するのが、この映画の面白いところ。重一郎は車を運転中に不思議な光に包まれて、それをきっかけに自分が火星人だと自覚するようになります。また、娘の暁子は、謎のストリートミュージシャンと出会ったことから、自分は金星人だと自覚します。さらに、息子の一雄も謎の代議士秘書と知り合ったのをきっかけに、自分は水星人だと自覚します。こうして家族は次々に覚醒するのです。
これで妻の伊余子が木星人にでも覚醒すれば、家族揃って宇宙人ということになりますが、残念ながら（？）彼女は地球人のまま。ただし、怪しい水ビジネスにはまっていきます。
宇宙人として覚醒した重一郎、一雄、暁子は、それぞれ地球を救うべく行動を開始します。重一郎はテレビ番組で「地球温暖化阻止」を強烈にアピール。美しすぎて周囲から浮いてしまう暁子は、真の美を知らしめるためミスコンに出ようとします。また、一雄はこちらも地球を救うと信じて、代議士秘書の指示に従って行動します。
こうして地球を救うために動き出した家族の姿を、あの手この手で盛り上げて楽しく見せる吉田監督。それを通して、家族の再生に加え、地球温暖化、美に対する考え方、水ビジネスの怪しさなど様々なテーマを描き出します。
感心するのは、シリアスと笑い、リアルと荒唐無稽のバランスの良さ。マジなテーマについて正攻法から描くかと思えば、人を食ったような笑いで観客を煙に巻き、いかにもありそうなエピソードを展開した後で、宇宙人ネタを中心に「アホかいな」と思わせるような話を紡ぎ出します。おかげで、予想もしない展開が次々に続いて、途中で飽きることはありません。
後半には重一郎と一雄の論争を配置。それは地球をどう認識するかという異星人同士の意見の食い違いであると同時に、親子＝世代間の論争でもあります。
そのはてに用意されているのが家族の再生。ありがちではあるものの、素直に感動してしまいます。特に、重一郎と暁子とのウソと真実に関する告白が胸にジワーっとしみてきます。
そしてラストはＳＦらしいネタで締めくくります。死に瀕した重一郎と家族による逃走劇、そこで映る夜景の美しさ、なぜか出現する牛。そして、ＵＦＯの登場だっ！！
というわけで、いろんなものが詰め込まれ、怒涛の2時間7分が終了。人によって好き嫌いは分かれるかもしれませんが、地球や人間に対する愛情が感じられる映画なのは間違いないでしょう。重一郎を演じたリリー・フランキーの怪演だけでも観る価値はあります。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋2／1★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年5月26日（金）シネ・リーブル池袋にて。午後2時20分の回
[「う」のページ]
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