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ビジランテ
（2017年 日本）（上映時間2時間5分）
監督・脚本：入江悠
出演：大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉
村界人、般若、坂田聡、岡村いずみ、浅田結梨、八神さおり、宇田あんり、市
山京香、たかお鷹、日野陽仁、菅田俊
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://vigilante-movie.com/
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＜ストーリー＞
アウトレットモールの誘致計画が進む埼玉の地方都市。地元の有力者だった父
が亡くなり、市議会議員の次男・二郎（鈴木浩介）は予定地に含まれている土
地の相続を巡って、デリヘルの雇われ店長をしている三男の三郎（桐谷健太）
に連絡を取る。そんな中、高校時代に行方をくらましていた長男・一郎（大森
南朋）が30年ぶりに姿を現し、父の遺言書を盾に土地を相続すると主張する。
それが原因で二郎と三郎は、危険な立場に追い込まれていくのだが……。
＜レビュー＞
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閉塞した地方都市で起こる三兄弟による暴力の連鎖
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2008年の『ＳＲ サイタマノラッパー』が注目され、『22年目の告白 私が殺
人犯です』などのメジャー作品を手がけるようになった入江悠監督。久々にオ
リジナル脚本による映画を撮りました。
舞台になるのは埼玉の地方都市。閉塞感漂う中で、暴力の渦に巻き込まれてい
く三兄弟の愛憎を描いたドラマです。
映画の冒頭で描かれるのは、3人の少年が川を渡ろうとする壮絶なシーン。それ
は神藤一郎、二郎、三郎の三兄弟。まもなく、彼らは父・武雄による激しい暴
力にさらされます。直後に高校生の一郎は家を飛び出します。
それから30年後、地元ではアウトレットモールの誘致計画が進んでいます。地
元の有力者だった武雄が亡くなり、市議会議員の次男・二郎は予定地に含まれ
ている土地の相続を巡って、先輩市議から何としても土地を相続するように命
じられます。そこで彼は、デリヘルの雇われ店長をしている三男の三郎に連絡
を取ります。
そんな中、長男・一郎が30年ぶりに姿を現します。彼はなぜか武雄の署名入り
の公正証書を持っていて、遺産相続を主張します。それが原因で二郎と三郎は、
危険な立場に追い込まれていきます……。
閉塞感漂う土地と、暴力的な父の呪縛から逃れられない3人の兄弟それぞれの複
雑な心理が、ぎくしゃくした関係の中から見えてきます。一郎は多額の借金を
背負っていますが、遺産相続を主張するのはそのためではなく、土地への執着
があるようです。そして、彼には父譲りの暴力の影が色濃くつきまとっていま
す。
二郎はひたすら出世を目指し、都合の悪いことには目をつぶっています。それ
でも、かつてはともに父の暴力の犠牲になった兄弟に対する思いが、あちらこ
ちららで見え隠れします。
三郎は基本的には優しい性格で、遺産争いなどよりも大事なことがあると信じ
ています。しかし、デリヘルの経営者である地元のヤクザに支配され、身動き
が取れなくなっていきます。
まったく違う世界で生きてきたそんな三兄弟の、欲望、プライド、兄弟の絆が
絡み合い、ぶつかり合い、凄惨な事態へと突入していきます。
三兄弟を演じた大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太はいずれも素晴らしい演技です。
篠田麻里子、嶋田久作などの脇役にも存在感があります。
閉塞した地方都市が抱える闇と、三兄弟が抱える心の闇が絡み合い、人間のさ
まざまな顔が見えてくる映画。暗くて、救いのないドラマですが、重厚な古典
文学を最後まで目が離せませんでした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
2017年12月17日（日）テアトル新宿にて。午後1時50分の回
[「ひ」のページ]
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