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わたしたち（THE WORLD OF US）
（2015年 韓国）（上映時間1時間34分）
監督・脚本：ユン・ガウン
出演：チェ・スイン、ソン・ヘイン、イ・ソヨン、カン・ミンジュン、チャ
ン・ヘジン
＊YEBISU GARDEN
CINEMAほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://watashitachi-movie.com/
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＜ストーリー＞
小学校に通う10歳の少女ソン（チェ・スイン）。クラスではいじめられ、いつ
もひとりぼっちだった。そんな中、終業式の日に1人で教室にいた彼女は、転校
生のジア（ソン・ヘイン）と出会い、互いの家を行き来するほどの仲良しにな
る。だが、新学期を迎えるとジアはソンを仲間はずれにするボラと仲良くなり、
ソンに冷たくあたるようになる……。
＜レビュー＞
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2人の少女の揺れ動く心理をリアルに切り取る
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小学生の2人の少女の友情と裏切りのドラマです。冒頭のシーンを観ただけで、
すっかり心をつかまれてしまいました。学校でドッジボールをするための組み
分けをしているのですが、主人公の10歳の女の子ソンの表情だけをアップで追
い続けます。
彼女の表情は少しずつ変化します。あどけない期待の笑みに続いて不安が浮か
び、そして失意の表情を見せます。どうやらソンはクラスで仲間外れにされて
いるようです。ドッジボールでも言いがかりをつけられてコートの外に出され
ます。その間の彼女の揺れ動く心理がリアルに伝わってきて、目が離せなくな
ってしまいました。
その後、終業式の日に1人で教室にいたソンは、転校生のジアと出会います。2
人はすぐに親しくなり、夏休みに互いの家を行き来するようになります。
カメラはジアの表情もきっちりと映し出します。2人が友情を紡いでいく中で、
それぞれの心のキラキラした輝きをスクリーンに刻み付けます。その生き生き
とした描写を観ているうちに、こちらも微笑ましい気持ちになってきます。
ソンの家は余裕がなく、両親ともに朝から晩まで働いています。そのためソン
は幼い弟の世話をしています。父と病床にある祖父との確執も、ソンの家庭に
影を落とします。
ジアの家庭は両親が離婚して祖母と暮らしています。父には若い再婚相手がい
て、母とはあまり会っていません。その母は、仕事でイギリスにいるといいま
す。それぞれに複雑な家庭環境を抱えた2人が、親しくなるのは当然の成り行き
かもしれません。
しかし、そんな2人には大きな違いもあります。ジアは経済的には恵まれていて
塾通いをしています。それに対して、ソンの家庭にはそんな余裕はありません。
携帯電話も持たせてもらえません。ソンにとって、それが悔しくてたまりませ
ん。
その一方で、両親の愛に恵まれていないジアに対して、ソンは親の大きな愛情
を受けています。時には優しく、時には厳しく接し、彼女を大きな愛で包み込
む母。ジアはそれを嫉妬します。
そんな環境の違いを背景に、新学期に波乱が起きます。2人のクラスには、成績
優秀で人気者のボラを中心としたグループが君臨しています。いわゆるスクー
ルカーストです。そして、塾通いでボラと親しくなったジアは、ソンに冷たく
あたるようになるのです。
ジアに突然冷たくされるようになったソンの気持ちも、リアルに描かれます。
あまりのリアルさに息苦しくなるほどです。ここでもソンの表情を通して彼女
の驚き、戸惑い、失意をあぶりだします。それとともに、行きがかり上いじめ
る側に回ってしまったジアの葛藤や、困惑も彼女の表情によって示します。
2人の少女の揺れ動く心理を、その表情から繊細に描き出した演出が圧巻。当然
ながら、チェ・スイン、ソン・ヘインという2人の少女の演技は、映画初出演と
は思えないほどの才能にあふれています。しかし、それを引き出すのはやはり
監督の力。新鋭のユン・ガウン監督の力量に感服するしかありません。
終盤、ソンはジアとの関係を回復しようとします。だが、些細なことからジア
の秘密をばらしてしまい、それがまた思わぬ事態を招いてしまいます。
このドラマには、お手軽な2人の手打ちなどはありません。だが、そんなものよ
り、はるかに心をとらえて離さないラストシーンが用意されています。祖父の
死、弟のある言葉を伏線にしたそのシーンは、冒頭と同じドッジボールのシー
ン。そこでのソンの行動が胸を打ちます。「わたしたち」というタイトルが大
きな意味を持ちます。ソンとジア、2人のその後について思いを馳せない観客は
いないでしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（94点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年9月23日（土）YEBISU GARDEN CINEMAにて。午後12時45分の回
[「わ」のページ]
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