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夜明けの祈り（LES INNOCENTES）
（2016年 フランス・ポーランド）（上映時間1時間55分）
監督：アンヌ・フォンテーヌ
出演：ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサ
ン・マケーニュ、ヨアンナ・クーリグ、エリーザ・リチェムブル、アンナ・プ
ロフニアク、カタジナ・ダンブロフスカ、トーマ・クマン、パスカル・エルソ
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次
公開
ホームページ http://yoake-inori.com/
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＜ストーリー＞
1945年12月、ポーランド。赤十字で活動するフランス人女医マチルド（ルー・
ドゥ・ラージュ）のもとに、一人の修道女が訪れて助けを求めに来る。マチル
ドが遠く離れた修道院を訪ねると、そこには戦争末期にソ連兵の暴行によって
妊娠した7人の修道女たちがいた。残酷な現実と神への信仰の狭間で苦しむ彼女
たちを見たマチルドは、かけがえのない命を救うため激務の合間を縫って修道
院に通うのだが……。
＜レビュー＞
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悲劇の修道女たちを救う医師を通して伝わる命の大切さ
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第二次世界大戦直後のポーランドで、悲劇に見舞われた修道女たちを救ったフ
ランス人女医を描いた実話を基にしたドラマです。
映画は1945年12月の修道院の場面からスタートします。祈りを捧げ聖歌を歌う
修道女たち。しかし、その時、何やら悲鳴のようなものが聞こえてきます。い
ったい何が起きているのか。
まもなく、その中の一人の修道女が修道院を抜け出して、フランス赤十字の施
設を訪れます。そこにいた女医のマチルドに「大変なことが起きているので来
て欲しい」と頼む修道女。しかし、マチルドは「ここはフランス人を診るとこ
ろなので、ポーランドの赤十字を訪ねなさい」と断ります。
その後、マチルドは手術の助手を務め、それが終わると何気なく窓の外を見ま
す。すると、そこにはあの修道女が雪の中で一心に祈っているではありません
か。放っておけなくなったマチルドは、彼女に連れられて遠く離れた修道院に
向かいます。
マチルドが修道院に着くと、そこにいたのは大きいお腹を抱えて苦しむ女性で
す。マチルドは帝王切開で出産させます。生まれた赤ん坊は、修道院の院長が
すぐに連れ去ってしまいます。
実は、この修道院には戦争末期にソ連兵が侵入し、修道女たちを暴行したので
す。それによって7人の修道女が妊娠していました。彼女たちを見捨てることが
できないマチルドは、職場や恋人の同僚医師にも内緒で修道院に通い、彼女た
ちを診察し続けます。
『ココ・アヴァン・シャネル』などで知られる女性監督のアンヌ・フォンテー
ヌは、ただの偉人伝ではなく厚みのあるドラマを展開します。マチルドの医師
としての強い使命感や若さゆえの熱い思いとともに、戸惑いや苦悩もきちんと
描き出しています。恋人の同僚医師との関係なども、そこに絡ませます。
そして、何よりもじっくり描かれるのが修道女たちの心理です。彼女たちにと
って純潔は神に捧げるものですが、それがねじ曲げられてしまったわけです。
そんな残酷な現実と信仰の狭間で悩み苦しむ修道女たちの姿を通して、信仰と
いう難しい問題にも切り込んでいます。
マチルドの献身的な活動は、修道女たちの心を少しずつ溶かしていきます。そ
こから信仰の奥に隠された修道女たちの本音も見えてきます。
修道女たちをステレオタイプに描かずに、一人ひとりの個性を際立たせている
のも特徴。ある修道女はソ連兵を「彼は私を守ってくれた婚約者だ」と言い切
ります。修道院に来る前に恋人がいたという修道女もいます。
一方、修道院の院長は、一連の事実が露見して修道院が閉鎖されては困ると、
事実をひた隠しにします。
終盤には、ある隠されたが事実が発覚し、それに起因して大きな悲劇が起きま
す。それをきっかけに、マチルドは大きな賭けに出ます。詳しい内容は伏せま
すが、それが修道院に新たな未来をもたらします。明るく清々しい後日談が描
かれて、映画は幕を閉じます。
この終盤の一件を通して、フォンテーヌ監督の意図が明確になります。人を不
幸にするような頑なな信仰や体面などよりも、最も大切なものは人の命である。
それこそが監督の伝えたかったことではないでしょうか。
この映画の映像の素晴らしさも特筆もの。こちらも女性の撮影監督カロリー
ヌ・シャンプティエが、まるで絵画のような美しい映像を紡ぎ出しています。
特に修道院のシーンにおける光の使い方が印象的です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年8月5日（日）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後12時55分の回
[「よ」のページ]
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