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ユリゴコロ
（2017年 日本）（上映時間2時間8分）
監督・脚本・編集：熊澤尚人
出演：吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、佐津川愛美、清野菜名、清原果
耶、木村多江
＊丸の内ＴＯＥＩほかにて全国公開
ホームページ http://yurigokoro-movie.jp/
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＜ストーリー＞
カフェレストランを営む亮介（松坂桃李）。だが、婚約者の千絵（清野菜名）
が突然姿を消してしまう。そんな中、ガンで余命わずかと宣告された父の書斎
の押し入れで、亮介は1冊のノートを見つける。それは、人を殺すことに心の拠
り所を感じてしまう美紗子（吉高由里子）と名乗る女が、自らの殺人と、洋介
（松山ケンイチ）という男性との運命的な出会いについて綴ったものだった。
これは事実なのか、それとも父の創作なのか。激しく動揺するとともに、強烈
にそのノートに惹きつけられていく亮介だったが……。
＜レビュー＞
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おぞましいホラーが悲しい女の愛のドラマへ変化
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沼田まほかるの小説の映画化です。
最初に登場するのは亮介というレストランオーナー。婚約者とともに車に乗っ
て、職場へと向かっています。いかにも幸せそうな２人。だが、まもなくその
婚約者は失踪してしまいます。
そんな中、亮介は末期のすい臓がんで自宅療養中の父・洋介の部屋で、ある
ノートを見つけます。それは、「ユリゴコロ」と題した女の手記。そこには、
恐ろしい事実が書かれてありました。果たしてこれは小説なのか、それとも実
話なのか。
というわけで、婚約者に失踪された亮介の現在と、彼が読む手記に書かれた内
容が同時並行で描かれます。その手記の内容があまりにもエグすぎます。幼い
頃に口がきけず、医師から「この子には“拠り所”がない」と言われたのを
「ユリゴコロ」だと思った美紗子という少女。周囲に対する違和感と空虚な心
を抱えて、まもなく殺人に「拠り所」を見出していきます。
彼女が殺人を犯す場面がかなり凄惨。少年の体の上から下水のふたを閉める
シーンなど、まるで虫けらのように人を殺していきます。料理学校で知り合っ
たリストカット女との一件も、年中手首から血が流れるので気色が悪い。熊沢
尚人監督は、この映画全体にまるでアートのような美しい映像を散りばめてい
るので、多少はエグさも緩和されるものの、それでもやはりかなり強烈。前半
は完全におぞましいホラー映画の様相です。
ただし、中盤になるとドラマのテイストが変化し、悲しい運命を背負った女の
人生ドラマに突入していきます。
手記の続きで、美紗子はある男と知り合います。彼は罪を背負って生きる男。
一方、美紗子も数々の罪を背負っていますが、彼女には罪の意識がありません。
そんな２人が交流を重ねる中で、大きな変化が起きていきます。
このあたりからの人間ドラマは、なかなか見応えがあります。男の無上の愛、
美紗子の罪悪感と葛藤がスクリーンに交差して、何とも言えない切なさを漂わ
せます。
映像も相変わらず魅力的。特に美紗子と男が初めて関係を持つところのイメー
ジショットの鮮烈さが際立ちます。
そして、ついに明らかになる亮介と父と美紗子との関係。
残念ながら終盤は、テレビの２時間サスペンスのような既視感のある展開。お
まけにこの映画、全編にあり得ない展開が目立ちます。
それでもラストシーンは素直に感動できるシーンでした。
主演の吉高由里子はこれまでのどの役とも違う演技で、難しい役をきちんとこ
なしています。松山ケンイチをはじめ他の役者の演技も存在感たっぷりです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（80点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年10月15日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時50分の回。
[「ゆ」のページ]
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