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～ライター・佐久間愛のページです。 |
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バランチ （06／2／1）
―自分でカスタマイズしたテディベア
ある男が誕生日にサプライズを企ててくれた。
企画内容は、「クマ本体の形・素材選びから洋服までを自由に組み合わせカスタマイズし、自分だけのテディベアを作り、それを交換しよう。」というものだった。
—「そこは、前からオレが行きたかったところなんだ」。初めて訪れる場所らしく、銀座を少しぶらつくこととなったが、こんなところにこんな店あったっけ？という場所にその店はあった。ヌイグルミの「ヌケガラ」が並ぶ、そこは「手作りテディベアの店」。既にクマの出来上がりのイメージ・構成が出来ていた彼は、着くなり2時間で、「自分だけのクマ」をそそくさと作りあげた。
—それは、私が貰うことになるクマ。少しは「私に贈る為に作るクマ」であって欲しかったのだが……。私が不覚にも望んでしまった「誰かにあげる為のクマ」（ホスピタリティのある、気の利いている「プレゼント」としてのクマ）は、彼の同僚の「結婚祝い」として、会社仲間とともに作られたことを後に知った。
―私は、4時間かけてクマを作り上げた。２体のクマの見栄えはまるで「風来坊なニート」という風体で共通していた。そして、何よりも、彼が生み出したクマは、やはり「人形（ひとがた）」らしく作り手本人に似ていた。「名前はバランチ、紫色をしてるから」と、言う。「夜。あまりに家に帰らないと、バランチは遊びに出てしまう・・・」とも。
会計を別々に済ませ、自分が作ったクマに別れを告げ、その代わりに彼の作ったクマを自分の家に連れ帰った。心臓部分には、バーコードで出生データが記録されているらしく道中無くしてしまっても戻ってくるようになっているらしい。
―女は、いつだって揺れている。ドライな関係は、かえって甘美を覚える時もある。そんな時は大抵がバイオリズムがさっぱりした気分の時と一致している。みんなは『キツクて誰かに心底甘えたくなる時もある』なんて言うけれど、「そんなことなんてあったけ？」位の気分でいられるものだ。
—そして良いのか悪いのか、私の仕事に対する姿勢の鈍くさいことが災いし、不規則な毎日で身体は慢性的に疲労気味。その上、不覚にもそれを隠せずにいる。私の「クマ」を作ったその男も、同じ生活パターンの様子。
「相変わらず自分のやりたい事だけは、ちゃっかりこなしているのだろうか。」そんな事を相手に思い、深くモノゴトを追求しないようにした。
私は、なんの約束も無い代わりに、毎日を「楽しい」で積み重ねていくように心を決めた。
—バランチは、いつも何食わぬ顔でベッドの脇にいる。
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